通常「坪庭」は、建物や塀に囲まれた小面積に庭空間をつくることを意味します。”囲いのある場”が坪庭にとって重要な要素で、空間を区切ってプライバシーを確保しつつ緑を取り込む=自分だけのプライベート空間が生まれ、心豊かな日々を過ごすことができる・・・と考えられています。
今回は、内と外、オープンとクローズドが場所によって異なることを意識した例です。プランニングに必要な課題として、駐車場や道路から玄関へ至る小道、小道の周辺の植栽帯、横長フィックス窓(二枚)から見える景色をどうするか?が挙げられました。小道は、敷地の形状と大きさから、複雑な形や数の必要性を感じられなかったため、直線の一本道としました。植栽帯は、小道を通る時に両サイドに緑を感じられることを意識して配植し、既存景石、砂利を加えて周辺環境に適するよう仕上げました。既存の水鉢(石臼)の再利用、コケのある空間も希望されていましたので、二枚のフィックス窓からそれぞれが見られるように配置しました。
家に入る、家から出るとき、必ずこの小道を通ります。植栽された四季折々の植物、周辺の動植物が相まって、オープンスペースの広がりやおおらかさが五感を刺激することでしょう。室内に入ってみると、一転静けさが訪れます。静謐な空間のなか窓から庭を眺めてみると、コケと水鉢、モミジのシンプルな坪庭を見ることができます。ここに囲いはありませんが、新たに植栽された植物と既存の植物、道路を挟んで生育している植物が緑の囲いとなり、”囲いのある場”を成立させています。今後の植物の成長で、より囲まれている感覚が強まっていき、坪庭は完成へと向かっていくことでしょう。じっくり、しっかり庭を育てていただけることを願っております。
Data
O House 内から外から
工種:ガーデン&エクステリア工事
所在地:久米郡久米南町
竣工:2021年
施工協力店:彩匠左官、庭匠 隠れみの庭
材料協力店:(株)ユニソン、平尾物産(株)、LIXIL、三洋建材(株)、(株)佐藤園芸