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さくらを愛でながら

 住職さんからお電話をいただいたのは2019年6月頃でした(Web.を見て連絡をいただきました)。当初は、奥の庭を整備する依頼でしたが、お話を進めていく中で、庭の整備+駐車スペースの舗装及び周辺工事に変化していきました。
 この街中のお寺には、本堂の南東側に2階建ての建物がありました。春彼岸、秋彼岸の時期には多くの人が集まるため駐車スペースの面積を大きくする必要があり、この度、建物の解体が決まったそうです(解体後、広々とした平地があらわれました)。この広々とした駐車スペースを作図するにあたり、効率的でわかりやすい駐車方法(一台分の幅、約2700mmの連続と広がり)、単調になり過ぎないデザイン(素材の変化をつける。本堂へのアプローチは駐車スペースと異なる素材を用いてメリハリを)等を主眼に置きました。
 また、本堂の南側には樹齢100年は超えると思われるサクラ(ソメイヨシノ)の巨樹があります。建物の解体により今まで隠れていたサクラがより見える状態になりました。したがって、駐車スペースの周辺はサクラを中心に作図をすることとしました。すなわち、お寺に用事がない人々も道路や歩道からサクラを見ることができる、訪れた人々もゆっくりサクラを愛でることができる、花の時期には花見を楽しめる、夜のライトアップで夜桜も楽しめる・・・等々。サクラの花の時期の華やかさに加えて、それ以外の季節も楽しめるようイロハモミジ等を植栽する計画を立てました。
 植栽以外の壁やフェンスは、閉鎖的な空間というよりも誰もが立ち寄れる開放的な雰囲気(壁の高さはH1200とH1500として極力低く、フェンスは縦格子で透過性を上げる、入り口は石柱を残し門扉等は設置しない)を目指しました。ただ、閉鎖的(≒荘厳さ)と開放的(≒馴染みやすさ)とのバランスは多少意識しました。素材の色数を抑えること〔白~グレー~黒のグラデーション(白色花崗岩、大磯砂利の洗い出し、ステンレス製の看板、フェンスのアルミ柱色)と天然木ウリン材のブラウン色〕、素材数を絞ること(石、ステンレス、アルミ、天然木)、同素材でも質感の違いを出すこと(床面の白色花崗岩の延べ石と板石はバーナー仕上げ、花壇の白色花崗岩の延べ石はノミ切り仕上げ、壁の側面は白色花崗岩の乱尺割肌仕上げ)は、シンプルな中にも凛とした美しさを生み出しています。
 

 建物が解体され開放的になり、駐車スペースが整備され利用しやすくなり、看板が付きここに浄土真宗のお寺があることが認知されてきました。ただ、駐車スペースの工事中にコロナ禍となり、まだまだ収束していない状況です。2021年の春は工事が完成したにも関わらず、純粋にサクラを楽しむ時間を持てたとは言えません。今後はゆっくり、じっくり・・・、サクラを愛でる空間が堪能できるようになることを願っております。

Data

K Temple さくらを愛でながら
工種:ガーデン&エクステリア工事(リノベーション) 
所在地:岡山市北区
竣工:2020年
施工協力店:エクステリアプラス、Garden Belle、国富タイル、田中大一、彩匠左官、(株)アドサーブ、片山建築工房、ウチダ建築工房(有)、(有)カン・ファクトリー、庭匠 隠れみの庭
材料協力店:(株)LIXIL、三協立山(株)、平尾物産(株)、三洋建材(株)、(株)東洋石創、(株)ユニソン、大光電機(株)、(株)ベルク、(株)林田順平商店、(株)佐藤園芸

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