top of page

#002-01 大三島の風景

 第二回の訪問地は、愛媛県今治市大三島町と広島県尾道市、福山市です。大三島は2010年にところミュージアム大三島(設計:山本英明+DEN住宅研究所、2004年)と今治市大三島美術館(1986年)を訪れているので二回目です。このところミュージアム大三島、名前の通り所敦夫氏が自身のコレクションを寄付して出来上がったミュージアムで、その所氏から伊東豊雄氏が依頼を受けて出来上がったのが、今治市伊東豊雄建築ミュージアム(設計:伊東豊雄、2011年)です。ところミュージアム大三島でチケットを購入した時にスタッフの方が、「岩田健母と子のミュージアムも先生の設計ですよ」と教えてくれたので、そこにも行くことに決めました。

 もう一か所の訪問予定地、広島県尾道市、福山市には最近面白い現代建築が色々できていると知り、海沿いを訪れてみました。造船業などを営むツネイシホールディングス(株)が尾道市で運営しているリゾートホテル、ベラビスタ境ガ浜の敷地内にあるリボンチャペル(設計:中村拓志、2013年)と福山市にある二つの社宅、せとの森住宅(設計:藤本壮介、2013年)、Seto(設計:マウントフジアーキテクツスタジオ、2013年)が今回の目的地です。大三島と違い公の場ではない場所も含まれているのでどうなるか分かりませんが、邪魔にならないようにと思いながら車を走らせました。


 最初の訪問地はところミュージアム大三島です。次に今治市伊東豊雄建築ミュージアムへ。最後に少し車を走らせて今治市岩田健母と子のミュージアムへ向かいました。

ところミュージアム大三島。設計:山本英明+DEN住宅研究所、2004年。「キッシング・ドア」(ノエ・カッツ、2003年)がお出迎え。

外階段を降りてそれぞれの展示物へ。

入口から下って高低差6.0m。テラスからの景色は最高。※現代彫刻が中心の美術館。彫刻作品に興味がある方は、井原市立田中美術館で、平櫛田中の作品を堪能するのも良いです(平櫛田中賞を受賞された深井隆氏の作品がこのミュージアムにあります。)。

今治市伊藤豊雄建築ミュージアム。設計:伊東豊雄、2011年。

ミュージアム内のスティールハット。鉄筋コンクリートの基礎の上に、鉄骨と鋼板でできた4種類の多面体を積み重ねた構成。

スティールハット接写。福島、大崎上島が見える。

スティールハット外観。屋上の一部にテラスがあるが残念ながら入れない。

スティールハット室内。テーブルも多面体。

ミュージアム内の屋外展示物。左手前が「MIKIMOTO Ginza2」、右奥が「多摩美術大学図書館」。

ミュージアム内の屋外展示物。「多摩美術大学図書館」。

スティールハットから見たシルバーハット外観。

シルバーハット外観。中に伊東作品の図面を閲覧できるスペースがある。当時のシルバーハット(1984年)は街中で木々に囲まれていたので、今の方が開放的な立地。

シルバーハット内。ワークショップスペースとして活躍しそう。

シルバーハット外観。東京中野にあった氏の自邸を再生。

今治市岩田健母と子のミュージアム。設計:伊東豊雄、2011年。周辺環境も素晴らしい。

入口のロゴ。コンクリートの壁が湾曲しているのが分かる。

ミュージアム内。コンクリートの壁がぐるっと曲線を描いている。外から中は見えない。

ミュージアム内。内部は半屋外空間。見学者が少なかったこともあり、ほぼ独り占めできた。観賞用のベンチも点在。

このミュージアムで、中野本町の家(1976年、現存せず)の画像がよぎったが、色々読んでみると異なった考えで設計されているようだ。

ミュージアム内。40以上の彫刻が展示されている。囲まれているが、窮屈な感じは受けない。

ミュージアム内。別アングルで(その1)。

ミュージアム内。別アングルで(その2)。

 今回の訪問地は、緑豊かな大三島です。そこで三つの美術館を訪問したのですが、「自然の風景と建物及びその周辺との関係をどう表現するのか」という問題を考えさせられました。考え方は大きく分けて二つあると思います。一つは今ある風景と馴染むように新しいモノをつくる。もう一つは今ある風景に対抗した新しいモノをつくる。そして、その度合い(前者寄りになるのか後者寄りになるのか)はその時その時で変化し決定されていきます。風景に馴染むモノは全体の調和がとれているかもしれませんが、インパクトに欠ける場合があります。風景に対抗したモノは主義主張がはっきりしており意図が伝わりやすいのですが全体との調和がとれない場合があります。ただ、この感覚は主観によるところが大きいため、人によっては感じ、人によっては感じないといったあいまいなものも多いです。さらに竣工当初風景と馴染んでいないと感じていたモノもそのモノの経年変化や周辺の変化によって馴染んでいく事もあります。植物の生長は周辺を視覚的に劇的に変化させるアイテムの一つと言えるでしょう。

 今回の建物のなかで明らかに異質でインパクトのあるスティールハットが、10年、20年、30年と経過するなかで風景と馴染むようになるのか、インパクトのある状態を保ち続けるのか・・・良い悪いという話ではないので興味深く見守っていきたいです。

 最後に訪れた今治市岩田健母と子のミュージアムは、天候と時間と展示されている作品とが相まって暖かく包まれた空間になっていました。ところミュージアム大三島と今治市伊東豊雄建築ミュージアムが大三島の美しい自然と絡めた外に向けた空間づくりであったのに対して、この美術館は外との関係を打ち放しの壁で遮断して中に向けて空間づくりを行っていました。にもかかわらず、三つの中で一番暖かい気持ちになれたのは非常に不思議な感覚でした。


参考資料:「日本の現代住宅 1985-2005」、「CASA BRUTUS No.150」他

訪問日:2014年9月17日 10:00~

最新記事

すべて表示
bottom of page