現在の状況から、リノベートして新しい空間を創出する機会が徐々に増えてきたように感じます。今回もその一例で、約10年ほど前に新築された時の外構部分と土のままになっている庭部分を新たに生まれ変わらせることが、大まかな依頼内容でした。
現状のレンガタイル張のブロック塀の高さは、H1200~1300mmぐらいでアルミフェンス(H600mm)も透過性の仕様でしたので、歩道や道路から中が丸見えの状態でした。そこで庭からの高さ、既存ウッドデッキからの高さ、家の中からの高さなどを確認、検証し現状高+600mmの塀を増設することとなりました。直線10mの箇所は、荷重を考え上部にH600mmのアルミフェンスを用い、庭側に補強を目的とした控え壁を設けました。塀の仕上材には150×600mmのタイルが採用されました。このタイルは長さ、幅、厚み、色が異なるといった特徴があり、単調となりがちな塀に不規則でありながら定尺なリズムと軽い陰影を生んでいます。上部に設けたアルミフェンスは視線を遮ることを意識し、ポリカーボネート板を用いたフェンス(採光、通風を確保しつつ視線を遮ることができる)となりました。これらにより外部からの視線はかなり軽減され、庭はよりプライベート感のある空間となりました。
庭のコンセプトは、「今まで以上に快適でストレスのない過ごし方」としました。まず植物は、大小の花壇とレンガ縁石で見切った南東側のスペース(このスペースは将来別の構造物が出来るかもしれないので、ルーズに仕上げて自由度を持たせました)へ植栽しました。植栽スペースを部分で区切ることで、植栽管理が楽になることを意識しています。中央のベンチはウリン材を採用し木材の暖かみとメンテナンスの軽減を図りました。ベンチの多様性(座る、立つ、寝る、置くなど)を存分に活用してもらいたいと願っております。ベンチの足元は色々な考えののち人工芝(緑の空間は欲しいが、天然芝を張った場合の管理が難しそう)となりました。今後この人工芝がどういった経年変化を起こすのか、観察する必要がありますが、豊かな緑の空間は出来上がりました。既存の乱形擬石平板、木樹脂製ウッドデッキの色や素材感を意識してレンガ、ウリン材等を選択していただいたので、既存と新設が違和感なくおさまり上質な空間となりました。
夕刻から夜にかけては、ライトアップ(ベンチ下のライン状のライト、植栽を照射するスポットライト)が幻想的な雰囲気を醸し出しています。虫の対策をしながら、外で夕食を取ったり、お月見をしたり、宴を開いたり・・・楽しみが増えそうです。
天然素材と人工素材の併用は、どんな場面でも起こっています。素材の選択は立地と予算、嗜好によって決まる場合が多いと考えています。ガーデンやエクステリアで採用される素材は、短期間で終わるものでは無く、長期間に渡り外部と接触し続けるものです。10年、20年とその素材が変化する状況を、考察し続けることが必要であると感じた例です。
Data
S HOUSE 閉じて楽しむ
工種:ガーデン工事(リノベーション)
所在地:岡山市北区
竣工:2018年
施工協力店:(有)リビング建創、国富タイル、(株)アドサーブ、庭匠 隠れみの庭
材料協力店:佐藤園芸 ※その他材料は支給品