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#16-02 菊竹清訓 山陰と建築(その2)

  • 執筆者の写真: Green Scape Lab
    Green Scape Lab
  • 11月3日
  • 読了時間: 4分

初日の最後は「菊竹清訓 山陰と建築」〔島根県立美術館、会期:2021年1月22日(金)~3月22日(月)〕へ。二日目は出雲大社周辺を紹介いたします。


松江城の天守から宍道湖、島根県立美術館が見える
松江城の天守から宍道湖、島根県立美術館(1999年、菊竹清訓氏)が見える。手前の折半屋根は旧島根県立博物館(県庁第3分庁舎、1959年、菊竹清訓氏)。

島根県立美術館、南東エントランス
島根県立美術館、南東エントランス。

曲線を描く屋根(チタン葺き)
曲線を描く屋根(チタン葺き)。美しい。

天井と柱に隙間を取っている
館内の柱。天井と柱に隙間を取っている。柱の貫通感と屋根の浮遊感の演出かと思われる。

館内から宍道湖を眺める
館内から宍道湖を眺める。今回は曇天のため残念ながらこの美術館の売りとしている美しい夕日を眺めることはできなかった。

宍道湖側から美術館を見る
宍道湖側から美術館を見る。背後の山並みを遮らないように高さは低く抑えられている。

松江城を中心に菊竹清訓建築を見学して、最後は島根県立美術館で一日目は終了です。

二日目は出雲市方面へ。出雲大社周辺を見学しました。菊竹清訓氏の出世作ともいえる出雲大社庁の舎(現存せず)もこの機会に掲載いたします。

出雲大社庁の舎(ちょうのや)01
出雲大社庁の舎(ちょうのや、1963年、菊竹清訓)が奥に見える(撮影時2010年10月28日)。

出雲大社庁の舎(ちょうのや)02
竣工当時からの雨漏りなど、永続的な維持管理が困難なことから2016年に解体された。

出雲大社庁の舎(ちょうのや)03
元々は宝物殿として使用されていたが上記の雨漏り等メンテナンス上の都合でご祈祷受付所等に利用変更された。

出雲大社庁の舎(ちょうのや)04
「稲掛け」や「稲架場(はでば)」をモチーフにしたダイナミックかつ繊細な外観が特徴。

出雲大社庁の舎(ちょうのや)05
「メタボリズム(新陳代謝)」を具現化した典型的な建築物とのこと。

出雲大社庁の舎(ちょうのや)06
コンクリートの意匠の限界、多様性に挑んでいる様子がうかがえる。

出雲大社庁の舎(ちょうのや)07
壁面にプレキャストコンクリートのパネルをはめ込むなど、当時の最新技術が採用された。

出雲大社庁の舎(ちょうのや)08
日本建築学会賞の受賞(1963年)やDOCOMOMO Japanによって「日本におけるモダン・ムーブメントの建築100選」(2005年)の一つに選ばれたりしたが、存続は難しかったようだ。
出雲大社神祜殿(通称:宝物殿)01
出雲大社庁の舎が竣工して18年後、出雲大社神祜殿(通称:宝物殿)が竣工した(1981年、菊竹清訓)。

出雲大社神祜殿(通称:宝物殿)02
神祜(しんこ)には、「神の助け」、「神から幸を授かる」という意味が込められている。

出雲大社 庁舎
2008年から2019年にかけて行われた「平成の大遷宮」時に建てられた庁舎(2018年)。

出雲大社 拝殿
参拝者が祈禱などを行う拝殿

出雲大社 八足門
本殿を囲む瑞垣(みずがき)の正門である八足門。この奥に本殿がある。

出雲大社 神楽殿
神楽殿。長さ約13メートル、重さ5.2トンにもなる大注連縄(おおしめなわ)が有名。

島根県立古代出雲歴史博物館01
島根県立古代出雲歴史博物館(2007年、槇文彦)。「出雲国風土記を現代で表現する」がコンセプト。

島根県立古代出雲歴史博物館02
最初に目に飛び込んでくる耐候性鋼板(コールテン鋼)の壁。※表面を錆びさせることによって内部の鉄の腐食の進行を遅らせる効果がある

島根県立古代出雲歴史博物館 館内
博物館内の古代出雲大社の復元模型。 

 島根県立美術館は「日本の夕日百選」に選ばれているぐらい、夕刻時に訪れたい美しい美術館です。宍道湖側のガラス張りのロビーは無料開放されており、夕日の時間に合わせて閉館時間が設定されています。残念ながら訪問時は曇天であったため美しい夕日は見る事ができませんでしたが、美術館の優美な曲線と反射を意識した素材から、晴天時の夕日のすばらしさを想像することができました。再度晴天に訪れて、夕日を体感したい美術館です。

 二日目は、出雲大社周辺です。松江市から北西へ車で約1時間、18万平方メートルほどの広さがある出雲大社に到着です。出雲大社内の建築物は歴史があり素晴らしいモノばかりですが、今回は菊竹清訓氏にスポットを当てたブログですから、2016年に解体された「出雲大社庁の舎(ちょうのや)」の画像もあるだけ掲載しました。解体前の2010年の訪問から解体後の2021年の訪問の間に、有ったものが無くなっている寂しさはありましたが、建物の老朽化(竣工後50年以上経過)、慢性的な雨漏り(竣工当初から)、耐震問題等という建物自身の問題と維持管理費(特に修繕費)が建設費そのものを上回るほどになり、毎年累積していくといった所有者側の問題とおおむね60年ごとに行われている遷宮(平成の大遷宮、2008年~2019年)がこの時期に当たったことなどを考えると、やむを得ない決断だったかもしれません。

 最後に訪れた島根県立古代出雲歴史博物館は出雲大社の東側に位置し、出雲大社と古代出雲の歴史に関する貴重な資料を迫力ある展示で紹介している点が魅力の一つです。展示量が相当ありますので、じっくり腰を据えて見学すべき場所です。建築物は周辺環境を考慮にいれ、低層に抑えつつ、鉄・ガラス・コンクリートを組み合わせた直線基調のデザインであり、全体的にモダンな印象を与えています。特に鉄の印象を強く受けました。これは、出雲地方が古くから日本有数の鉄製産地であり、日本古来の製鉄法であるたたら製鉄の中心地であったことが影響していると思われます。

 岡山から出雲大社まで車で約3時間、松江までは約2時間半。どちらかへ行くのであれば日帰りで行けそうですが、両方まとめて日帰りは難しそうですので、バタバタせず行けるとき再訪してみたいと思います。


参考資料:「菊竹清訓 山陰と建築」、「菊竹清訓巡礼」、「松江の菊竹建築探訪」、「各種パンフレット+Web.」他

訪問日:2021年3月14日、3月15日


※ブログを再開いたしました。2021年訪問ですが作成は2025年です。記憶をたどりながら作成しておりますので、ご了承ください。

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