建物の老朽化等に伴い、古いモノと新しいモノの機能の変換がそこかしこで行われています。岡山も例外ではなく、今回掲載する岡山市民会館、隣接のRSK会館やその他、岡山県警本部庁舎、岡山市役所本庁舎、イトーヨーカドー跡地再開発、駅前再開発等の着工、計画が進んでいます。また、新しい文化の風を岡山市に吹き込もうと2016年から岡山芸術交流(岡山市で3年ごとに開催される国際現代美術展)が始まり、二回目となる「岡山芸術交流2019 IF THE SNAKE」は2019年9月27日(金)~11月24日(月)まで行われました。会期終了後も見学、鑑賞、活用できる場所がありますので今回紹介いたします。ハード、ソフト両面で、岡山の街は変わる?
岡山市民会館から岡山芸術創造劇場(仮称)へ生まれ変わる(6枚)。岡山市民会館に隣接するRSK会館も新社屋を建設中(2枚)。続いて「岡山芸術交流2019」終了後も見学、鑑賞、活用できる場所(11枚)へ。
岡山市民会館の竣工は1964年、RSK会館は1962年です。その当時は建設ラッシュ(東京オリンピック前後)で、1957年の岡山県庁舎(設計:前川國男)に始まり、岡山市では岡山県天神山文化プラザ(1962年、設計:前川國男)、林原美術館(1963年、設計:前川國男)などが、倉敷市では1960年の倉敷市立美術館(旧倉敷市庁舎、設計:丹下健三)に始まり、大原美術館分館(1961年、設計:浦辺鎮太郎)、倉敷国際ホテル(1963年、設計:浦辺鎮太郎)、倉敷ユースホステル(1965年、設計:浦辺鎮太郎)などが、津山市でも津山文化センター(1965年、設計:川島甲士)が竣工しています。ここからは私見ですが、1957年に大きな象徴としての県庁舎が完成し、威厳と新しい時代の幕開けをドーンっと示しました。その後、近辺に建築物を設計していく場合どうするか?一つの答えとして「地域密着型+対立しない」が挙げられます。県庁舎よりも若干岡山城と後楽園に近い、県庁舎ほどゆとりのあるアプローチが取れない、機能上+美観上高層にする必要性がないなどから、外観(地域性を意識した外壁材料の採用や正八角形の形状は素敵ではあるが)よりも内部空間の充実を図ったのではないかと想像しております(勿論、会館としての機能は十分満たしつつ)。内部空間で特に注目すべき箇所は、やはりモザイクガラスが施されたホワイエです。かわいくもあり、洗練された雰囲気もあり、光と色の強弱、ハーモニーがとても面白い場所となっています。岡山芸術創造劇場(仮称)の竣工は2021年、RSK新社屋の竣工は2020年を予定しています。その後の市民会館、RSK会館の利用方法がどうなるのか、気になるところです。
岡山芸術交流は、岡山県+香川県の瀬戸内国際芸術祭(2010年から3年ごとに開催、第五回は2023年予定)に比べると、現段階では知名度も集客数も及びませんが、継続することと残し続けることで大きな波が生まれ、様々な分野へ派生していく可能性を秘めたプロジェクトです。その中でA&Aの試みは、現在活躍中の日本の建築家(比較的若い)の住宅作品を岡山で見ることができるので、今運営されている2棟と計画中の3棟を確実に竣工し、計5棟は長く継続してほしいと願っております。もしも、岡山県民、市民の中で宿泊はできないが見学はしたいと思っている人が多数いた場合、スポット的に内部見学会などを開いていもらうことはできないのだろうか?岡山市南区にあるS-HOUSE Museum(設計:SANAA、1996年)と合わせた住宅作品ツアーがあれば是非行ってみたいし、誘ってみたいと思っていますが・・・。ただ、A&A リアムフジとA&A ジョナサンハセガワの宿泊予約が常に埋まっていて、その様なイベントを開催する間もなければ、実現する可能性は??。
いずれにせよ、ハード面での劇的な変化とソフト面での緩やかな変化によって街全体が変化していくことは、珍しいことではないので、特に感慨にひたるということは無いのですが、岡山芸術交流のような、面白いが簡単に理解できないプロジェクトはよほどの情熱がない限り、継続が難しい事象です。主催する方々の情熱が10年、20年、30年と続き、根付いていくことを切に願っております。
参考資料:「岡山芸術交流2019パンフレット」、「岡山市民会館のみどころ (公財)岡山市スポーツ・文化振興財団作成」、「建築家 浦辺鎮太郎の仕事」、「岡山県アーキツーリズムガイドブック おかやま建築散歩」、「各種パンフレット+Web.」他
訪問日:2020年1月16日他
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