前々からここにあることは知っておりました。が、通り過ぎることはあっても立ち止まることの少ない新神戸駅周辺。今回、「聴竹居 藤井厚二の木造モダニズム建築」展(2018年5月12日~7月16日)が開催されていることを知り、初めて竹中大工道具館を訪れました。
竹中大工道具館へ。入るまでの道中に興味深い箇所がたくさんある(11枚)。館内は外国人と大人が楽しめる場所が満載(24枚)。竹中大工道具館の奥には落ち着けるスペースが(8枚)。
今回の研修は三つの見どころがありました。一つは聴竹居(1928年竣工)について。展示物の撮影はできませんので画像はありませんが、設計者の藤井厚二氏(1888-1938)の考えに触れ、実物を見てみたいという気持ちがより強いものとなりました。竣工年から約90年を経て、今の生活と合わない部分もありますが、再認識される部分の方が多いように感じました。日本の気候風土に適した住宅をつくることは、劇的な気候変動を体感している今、熟考すべき課題です。安全・美観・快適等の要素を深く考え、それらを加味した住宅の必要性を強く感じました。資金に関してどうされていたかは分かりませんが(実家からの援助があったのでは?)、聴竹居は5つ目の実験住宅です。建築、特に住宅に関して研究を深めた氏の熱意もさることながら、5つ作らなければ理想の住宅を作ることができないという事実は、住宅の難しさ、奥深さを示しています。叶わぬことですが、もしも1945年以降もご存命であれば、6つ目、7つ目と理想を求められたのではないかと想像しています。
二つ目は常設展です。ここは時間の許す限り楽しんでもらいたいスペースです。触って、嗅いで、勉強になる、まさに大人が楽しめるミュージアムです。展示物の撮影が可能ですので、外国人観光客がほぼ全ての展示物を写真におさめていたシーンが非常に印象に残っています。また、建築関係の仕事に就いておられるであろう方々が多いのも他のミュージアムにはない特徴です。いずれにしても再度訪れてみたい場所の一つとなりました。
三つ目は展示物以外の設えについてです。スーパーゼネコン〔年間売上高1兆円を超えるゼネコンがスーパーゼネコンと呼ばれています。(株)大林組、鹿島建設(株)、大成建設(株)、清水建設(株)、(株)竹中工務店の五社がそれに当ります。〕の一つ、竹中工務店の技術を余すことなく発揮しているのが展示物以外の設えです。通路、扉、階段、天井、壁などなど、見どころ満載です。正解かどうかは分かりませんが、裏テーマは浮遊感ではないかと思っています。入口にある竹中大工道具館の銘板は、サツキの植込みに水平に刺さるように設置されています。竹中大工道具館の建物は、周辺を方形石のテラスが囲み基礎部分が見えにくくなっています。外階段も中の木製階段も一段一段、段板が分かれており浮いているようです。展示室は1階から降りてB1階、B2階という順路を辿ります。吹き抜け箇所あったり、B1階の中庭とB2階の展示物が同時に見えたり、B2階の中庭の大壁が1階近くまで垂直に延びていたり・・・とドラマチックな立面構成で浮遊感を演出しています。最奥の休憩室の坪庭にある景石は、砂紋を描く化粧砂利とは接さず、植栽帯から水平に飛び出ており浮遊している様です。これらの浮遊感を随所にさりげなく見せることで技術力と想像力を来訪者に示すことに成功していると感じました。
参考資料:「聴竹居 藤井厚二の木造モダニズム建築」、「TAKENAKA CARPENTRY MUSEUM 常設展示図録」、「ひととき 特別版」、「各種パンフレット+Web.」等
訪問日:2018年6月26日