#012 大人楽しいミュージアム

​ 前々からここにあることは知っておりました。が、通り過ぎることはあっても立ち止まることの少ない新神戸駅周辺。今回、「聴竹居 藤井厚二の木造モダニズム建築」展(2018年5月12日~7月16日)が開催されていることを知り、初めて竹中大工道具館を訪れました。


 竹中大工道具館へ。入るまでの道中に興味深い箇所がたくさんある(11枚)。館内は外国人と大人が楽しめる場所が満載(24枚)。竹中大工道具館の奥には落ち着けるスペースが(8枚)。

入り口通路から竹中大工道具館を見る。足元の基礎が見えない→浮遊感の演出。

この銘板、左側浮いていて、右側のサツキで隠れている所で地面と接している→浮遊感の演出。

今回は企画展、聴竹居 藤井厚二の木造モダニズム建築(2018.05.12-07.16)を見学する目的で訪問。

門の両サイドの石積みが良い感じ(その1)。

門の両サイドの石積みが良い感じ(その2)。

正門全景。意匠も見事。

通路の石張も横目地を揃えつつ、大小さまざまなサイズの石を敷き詰めている。

建物入り口周辺の落ち着いた空間。管理も行き届いている。

柱周辺のおさまり。鎖樋もしぶい。

手摺と外階段。これらも浮遊感の一役を担っている。

方形石張のテラススペース。目地がない。目地の無い箇所から水を下へ流している模様。

ホワイトオークの一枚板をくり抜いた階段。段板の両サイドのおさめが外階段と同じデザインになっている。

土壁を鏝(こて)で削り出した大壁。

唐招提寺金堂組物の実物大模型。すごい迫力。

当時の図面等も展示されている。素晴らしい。棟梁の仕事は多岐にわたっている。

尺表記が多いが、メートル表記もある。変換するだけでも一苦労であっただろう。

B1階の中庭をみる。軽やかな空間。分かり難いが達磨窯で焼かれた淡路の敷瓦が施されている

外国人観光客が最も興味を持っていた場所。継手仕口(つぎてしぐち)は日本建築の発達を支えた技。これは「腰掛鎌継ぎ」。

その他、多種類の継手仕口が展示されており、触って構造を確かめる事ができる。

「木を生かす」コーナー。代表的な樹木(スギ、ヒノキ、クリなど)の木目と樹皮、鉋屑などが展示されている。触って匂いを感じる事ができる。木によって性質が全く異なる。

B2階の中庭。サイズ、厚みの異なる方形石が敷き詰められている。おそらく花崗岩で、神戸市なので御影産?

休憩用の木製ベンチ。二つに分かれるが、合わせると一枚板っぽい。

見事な組子細工の明障子。

茶室のスケルトン模型「蓑庵」。

原寸で見る事ができる。バックヤードもきっちりと再現。

竹中大工道具館を出て奥へ進む。

手入れの行き届いた坪庭が見えてくる。

坪庭、濡縁、休憩所の組み合わせは住宅の趣。

道すがらに茶室「一滴庵」がある。春と秋の年2回特別公開を予定しているとのこと。

休憩所から庭をみる。窓が大きく取られているので開放感がある。

照明器具を隠して、間接照明であかりを取っている。さりげない。

こちらの橋か船を模したであろう石は、花崗岩。御影石かな。

濡縁と坪庭の景。

 今回の研修は三つの見どころがありました。一つは聴竹居(1928年竣工)について。展示物の撮影はできませんので画像はありませんが、設計者の藤井厚二氏(1888-1938)の考えに触れ、実物を見てみたいという気持ちがより強いものとなりました。竣工年から約90年を経て、今の生活と合わない部分もありますが、再認識される部分の方が多いように感じました。日本の気候風土に適した住宅をつくることは、劇的な気候変動を体感している今、熟考すべき課題です。安全・美観・快適等の要素を深く考え、それらを加味した住宅の必要性を強く感じました。資金に関してどうされていたかは分かりませんが(実家からの援助があったのでは?)、聴竹居は5つ目の実験住宅です。建築、特に住宅に関して研究を深めた氏の熱意もさることながら、5つ作らなければ理想の住宅を作ることができないという事実は、住宅の難しさ、奥深さを示しています。叶わぬことですが、もしも1945年以降もご存命であれば、6つ目、7つ目と理想を求められたのではないかと想像しています。

 二つ目は常設展です。ここは時間の許す限り楽しんでもらいたいスペースです。触って、嗅いで、勉強になる、まさに大人が楽しめるミュージアムです。展示物の撮影が可能ですので、外国人観光客がほぼ全ての展示物を写真におさめていたシーンが非常に印象に残っています。また、建築関係の仕事に就いておられるであろう方々が多いのも他のミュージアムにはない特徴です。いずれにしても再度訪れてみたい場所の一つとなりました。

 三つ目は展示物以外の設えについてです。スーパーゼネコン〔年間売上高1兆円を超えるゼネコンがスーパーゼネコンと呼ばれています。(株)大林組、鹿島建設(株)、大成建設(株)、清水建設(株)、(株)竹中工務店の五社がそれに当ります。〕の一つ、竹中工務店の技術を余すことなく発揮しているのが展示物以外の設えです。通路、扉、階段、天井、壁などなど、見どころ満載です。正解かどうかは分かりませんが、裏テーマは浮遊感ではないかと思っています。入口にある竹中大工道具館の銘板は、サツキの植込みに水平に刺さるように設置されています。竹中大工道具館の建物は、周辺を方形石のテラスが囲み基礎部分が見えにくくなっています。外階段も中の木製階段も一段一段、段板が分かれており浮いているようです。展示室は1階から降りてB1階、B2階という順路を辿ります。吹き抜け箇所あったり、B1階の中庭とB2階の展示物が同時に見えたり、B2階の中庭の大壁が1階近くまで垂直に延びていたり・・・とドラマチックな立面構成で浮遊感を演出しています。最奥の休憩室の坪庭にある景石は、砂紋を描く化粧砂利とは接さず、植栽帯から水平に飛び出ており浮遊している様です。これらの浮遊感を随所にさりげなく見せることで技術力と想像力を来訪者に示すことに成功していると感じました。

参考資料:「聴竹居 藤井厚二の木造モダニズム建築」、「TAKENAKA CARPENTRY MUSEUM 常設展示図録」、「ひととき 特別版」、「各種パンフレット+Web.」等

訪問日:2018年6月26日

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