岡山に住んでいてもなかなか行くことが出来ない県内の良い処、奈義町現代美術館(設計:磯崎新、1994年)。約十年ぶり二度目の訪問です。前回が曇天、今回も曇天と天候には恵まれていませんが、竣工して約20年経っても色褪せていないであろう三作品をじっくり、ゆっくり堪能したいと思います。
駐車場から奈義町現代美術館(8枚)、奈義町観光案内所、まずは外観を楽しみ美術館内へ。館内(3枚)→展示室「大地」(2枚)→展示室「月」(2枚)→展示室「太陽」(2枚)。
奈義町現代美術館は、三組の作家(宮脇愛子、岡崎和郎、荒川修作+マドリン・ギンズの各氏)と建築家の磯崎新氏との共同制作のなかで生み出された、作品と建築物が一体となった美術館です。作家の作品は三つの展示室「大地」、「月」、「太陽」に分かれており、それぞれの配置は、土地の自然条件に基づいた固有の軸線に従い計画されています。即ち、「大地」の延長線上には那岐山頂が、「月」は中秋の名月時の22:00の方向を、「太陽」は南北方向を指すというように・・・。この美術館での試みは、直島などで行われているサイトスペシフィックワークの先駆けとなる出来事で、今までの絵画等を展示する美術館から次の美術館へと変遷する分岐点となったように感じます。
作品は展示室「大地」にある宮脇愛子氏の《うつろひ》から始まります。ワイヤーを用いた曲線が幾重にも走り、水面、風、光、反射、外、内といったイメージが無機質な空間の中で膨らんでいきます。その後「月」、「太陽」のどちらに行くこともできますが、できれば先に「月」を、最後に「太陽」を見る方が個人的には腑に落ちるルートです。展示室「月」は岡崎和郎氏の《HISASHI-補遺するもの》が壁に配置されています。展示室内の花崗岩のベンチや好みの場所に座ってみると、景色と共に様々な反射音が聞こえてきます。人が歩く音、話す音、手をたたく音、笑う音・・・様々な音が三日月形の展示室にこだまし単純な空間構成でありながら、五感を刺激する体験ができます。最後の展示室「太陽」は最も強烈で非現実的な空間です。展示室入り口の螺旋階段を暗く狭くした効果により、展示室に入った瞬間の圧迫からの解放、暗闇からの光は非常なインパクトを生んでいます。徐々に目が慣れてくると展示作品《偏在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》の不思議さにも目を奪われます。水平面が無く平衡感覚を失う恐れのある空間に身を置いてみると、浮遊しているような感じもありながら、足裏の一部に荷重がかかるという言葉では表現しにくい経験を得ることが出来ます。荒川修作氏+マドリン・ギンズ氏は翌1995年に岐阜県養老郡に養老天命反転地を完成させます。奈義町で成功したアイデアを養老町で発展させたのではないかと想像しています。
今回の訪問日は日曜日のお昼前。にもかかわらず訪問者は私を含めて数組。その分、だれにも邪魔されずにゆっくり作品を見学することが出来ました。時間に余裕をもって訪問して欲しい場所です。
参考資料:「パンフレット(Nagi MOCA)」、「岡山建築散策マップ」、「ポストモダン建築巡礼」他
訪問日:2016年04月03日
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