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#003 戦後日本住宅伝説・挑発する家・内省する家

更新日:1月25日

 第三回の訪問地は、広島市現代美術館です。特別展「戦後日本住宅伝説-挑発する家・内省する家」を見学し、考察することが今回の目的です。この特別展は1950年代から70年代までの高度成長期に手がけられた16の住宅作品を展示しており、出品作品ごとに、写真、図面、模型、映像、その他に分けて掲載されています。写真OKマークの付いたものは撮影できるので、出来る限りカメラにおさめました。


​ 広島市現代美術館からご紹介。続いて「戦後日本住宅伝説・挑発する家・内省する家」展へ。各々の建築家の作品を見学。丹下健三~増沢洵~清家清~磯崎新~菊竹清訓~東孝光~篠原一男~坂本一成~白井晟一~宮脇檀~毛綱毅曠~黒川記章~原広司~石山修武~伊東豊雄~安藤忠雄。

広島市現代美術館:外観01
広島市現代美術館。設計:黒川記章、1989年。2005年以来、ほぼ十年ぶりに訪問。

広島市現代美術館:外観02
円形が印象的。広島市現代美術館の後に吉備中央町のきびプラザ(1992年)ができる。

広島市現代美術館:外観03
こちらも円形。メタリックと青空の対比。

広島市現代美術館:外観04
岡山からギリギリ日帰りできる距離なので、面白い企画展がある時は訪れたい場所。

広島市現代美術館:美術館へ向かう階段
階段を少々のぼって美術館へ。石の直方体は、噴水の様な水場。

倉敷市立美術館:設計は丹下健三
❶住居(設計:丹下健三、1953年)は撮影できない為、中四国地方の丹下作品を。倉敷市立美術館(1960年)。

香川県庁舎:設計は丹下健三
香川県庁舎(1958年)。

コアのあるH氏の住まい:設計は増沢洵
❷コアのあるH氏の住まい(設計:増沢洵、1953年)。

私の家:設計は清家清
❸私の家(設計:清家清、1954年)。

新宿ホワイトハウス:設計は磯崎新
❹新宿ホワイトハウス(設計:磯崎新、1957年)。岡山県には、奈義町現代美術館(1994年)、岡山西警察署(1996年)がある。

スカイハウス:設計は菊竹清訓
❺スカイハウス(設計:菊竹清訓、1958年)。島根県には氏が設計した建築物が多数存在。鳥取県には#001-2で登場した東光園も。

塔の家:設計は東孝光
❻塔の家(設計:東孝光、1966年)。

46年後の塔の家
46年後の塔の家(2012年撮影)。

白の家:設計は篠原一男
❼白の家(設計:篠原一男、1966年)。

水無瀬の町家:設計は坂本一成
❽水無瀬の町家(設計:坂本一成、1970年)。

虚白庵:設計は白井晟一
❾虚白庵(設計:白井晟一、1970年)。静岡県にある登呂遺跡に何度か行った記憶はあるが、近接の芹沢銈介美術館(1981年)に行った記憶がない。いつか行ってみたい場所の一つだ。

松川ボックス:設計は宮脇檀
❿松川ボックス(設計:宮脇檀、1971/1978年)。

反住器:設計は毛綱毅曠
⓫反住器(設計:毛綱毅曠、1972年)。

中銀カプセルタワービル:設計は黒川記章
⓬中銀カプセルタワービル(設計:黒川記章、1972年)。岡山県人になじみの深い中国銀行、通称「ちゅうぎん」とは全く関係なく、「なかぎんカプセルタワービル」と読む。

国立新美術館:設計は黒川紀章
国立新美術館(2006年)。

京都駅ビル:設計は原広司
⓭原邸(設計:原広司、1974年)の撮影を忘れた為、有名な所を。京都駅ビル(1997年)。原邸がスケールアップして京都駅ビルになったとのこと。

札幌ドーム:設計は原広司
札幌ドーム(2001年)。

幻庵:設計は石山修武
⓮幻庵(設計:石山修武、1975年)。伊豆の長八美術館(1984年)もいつか行ってみたい場所の一つだ。

中野本町の家:設計は伊東豊雄
⓯中野本町の家(設計:伊東豊雄、1976年)。

住吉の長屋:設計は安藤忠雄
⓰住吉の長屋(設計:安藤忠雄、1976年)。

おかやま信用金庫 内山下スクエア:設計は安藤忠雄
おかやま信用金庫 内山下スクエア(2013年)。

 ❶住居(設計:丹下健三、1953年)から⓰住吉の長屋(設計:安藤忠雄、1976年)まで、ほぼ時系列順に作品が並べられているので、住宅史を考えるうえでも興味深い内容でした。

 16作品のうち白井晟一氏を除いた15作品が二十代後半から四十代前半の作品で、16作品のうちほぼ半数が自邸もしくは近親者の住宅作品となっており、若くエネルギッシュな設計者が実験住宅的な意味合いで、近親者らの協力を得て作り上げたと言えるかもしれません。

 50年代の作品の中で、❷コアのあるH氏の住まい(設計:増沢洵、1953年)と❸私の家(設計:清家清、1954年)は庭などの外部空間との向き合い方が秀逸で、室内の大きさ以上に開放感が得られるであろうと想像します。60年代以降は、一般的な常識よりも自身の信念を強く体現させた作品が多いように感じました。

 これらの展示作品が竣工してから約40~60年後の現在、当時では考えられないほど便利な世の中になりました。見学しながら思ったことは「常識とは何?」と「便利=必ずしも豊かではない」ということです。効率や快適性のみを追い求めた事象がはたして人間を豊かにするのだろうか?といった疑問は、色々な機器が進化するたびに思うことです。ただ一旦出来上がった便利さを手放すことはなかなかできません。余白や不便さから生まれる発想の転換が重要なことは分かっていても、そればかりでは生きてはいけない事も事実です。もしもどちらかに偏ってしまった場合に、それらのバランスを取るアイテムの一つとして植物があるはずなので、これからも植物を植えること、育てることを推薦していこうと強く思いました。


※広島市現代美術館での会期は終了しましたが、松本市美術館で2015年4月18日-6月7日まで、八王子市夢美術館で6月中旬-7月中旬(予定)まで行われますので、興味のある方は是非足を運んでみてください。


参考資料:「戦後日本住宅伝説 挑発する家・内省する家」、「藤森照信の原・現代住宅再見」、「藤森照信の原・現代住宅再見2」、「藤森照信の原・現代住宅再見3」他

訪問日:2014年11月19日 10:30~

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