近くにあるのになかなか行くことができなかった場所は結構ありますが、今回の神勝寺(臨済宗建仁寺派 天心山 神勝禅寺)もその一つです。近県で藤森照信氏の作品は、今の所ここでしか見ることができません。名和晃平氏の作品も犬島のF邸で見ましたが、恒久展示かどうかわからないので、恒久的に見ることができるのはおそらくここだけ。色々とおもしろいことをされている二人の作品を同じ敷地内で見学することができるなんて・・・。神勝寺の力、恐るべし!
まず最初に神勝寺総門(1枚)、振り返れば洸庭(2枚)が見える。総門をくぐり散策。総門~松堂(9枚)~多宝塔(1枚)~洸庭(13枚)へ。 最後に無明院(2枚)へ。



























神勝寺の創建は1965年12月となっており、寺院としては新しい部類に入ります。開基は常石造船(株)二代目社長の神原秀夫氏、臨済宗建仁寺派の特例地寺院です。点在する建立物は移築、再現、復元したものが多く、三溪園(横浜市)、四国村(高松市)、江戸東京たてもの園(小金井市)のような印象を受けました(あくまでも私見ですが)。ここに寺務所として松堂(設計:藤森照信)が竣工したのが2014年。アートパビリオン洸庭が竣工し、「神勝寺 禅と庭のミュージアム」としてリニューアルオープンしたのが2016年9月です。Blog#002-02〔地域を元気にする力(その1)〕で掲載した三つの建築物(リボンチャペル、せとの森住宅、Seto)の竣工年が2013年。まだ見学できていませんがONOMICHI U2(設計:谷尻誠)が2014年。短期間で多くの建築作品が、様々な考え方や手法で完成しています。これら全てのクライアントがツネイシホールディングス(株)(及びその関連会社)という事実。恐るべし!
松堂は、銅板や松丸太の柱が経年変化で良い感じになっており、周囲と調和しているように感じました。各所で工業製品を使用しているのですが、表面の仕上げが手作業に近い為暖かみのある作品に仕上がっています。屋根の頂部にアカマツが植栽されいる様子は、「藤森照信展 自然を生かした建築と路上観察」を見学した後だったこともあり、違和感を受けませんでした。ただ、Blog#011で述べたように今後のマツの生長によって、屋根周辺がどういった変化を見せるのかが非常に気になります。漏水やマツが枯れないことを祈ります。
洸庭は、禅を意識したつくりで、「素材のもつポテンシャルを引き出すため、内外に使用する材の種類や建築的な機能は減らすように努めた。例えば彫刻の場合、ワンマテリアル・ワンテクスチャーの造形は空間に凛とした響きを与える。《洸庭》の杮葺きにも同じような効果を期待した」という名和氏の言葉が印象的でした(KOHTEI KOHEI NAWA | SANDWICHより)。
面白いと感じたことの一つとして、室外では本物の水を用いず、室内では本物の水を用いたことです。外から洸庭を見てみると、砕石の荒々しい海に浮かぶ舟、もしくは浮いている飛行体の様に見えます。海の広さは砕石が敷き詰められた範囲で区切られ、視覚的には有限となります。一方、室内の洸庭は、暗闇とわずかな光、水の揺らぎを感じる空間で、水が存在していることは理解できますが、暗闇である為境界が判然とせず、広さや大きさは個人の想像で決定することになります。開かれた空間が有限で、閉じられた空間が無限。自然を感じる空間に想像の水、人為的に作られた空間に本物の水・・・といった反転した感覚が生じ、とても興味深い体験となりました。いずれにしても言葉よりも感じることが重要です。一度体感しに訪れてみてはいかがでしょうか?
参考資料:「神勝寺 禅と庭のミュージアム」、「KOHTEI KOHEI NAWA | SANDWICH」、「CASA BRUTUS No.176」、「CASA BRUTUS No.200」他 訪問日:2017年12月10日 13:00~