大三島から車を走らせ広島県尾道市、福山市へ。2013年に完工した三つの面白そうな建物を訪問しました。
リボンチャペルから。 リボンチャペルを見学した後は、車を走らせて福山市にあるツネイシホールディングス(株)の社宅へ。せとの森住宅 → Seto。
リボンチャペルの外観はインパクトがあり、興味深いものでした。製図技術と施工技術の向上に驚くばかりです。中には入れませんでしたが、展望台からの景色は良く、瀬戸内海の香りを存分に楽しむことができました。ただ、一つ残念だったのが外の螺旋階段と中のチャペルとが分断されていたこと。外と中の連続性があればチャペルの意味合いがより深くなったのではと思いました(あくまでも私見です)。
次に訪れたせとの森住宅は個人住宅やメーカー等による分譲住宅ではなく社宅だからできることを実現させた面白い例です。13棟全てがまとまって見える主な理由として、形(家形)、素材(外壁)、高低差、ランダムな配置などが挙げられます。他に、駐車場を別で設けていることも理由の一つかもと思いました(立地条件で元々駐車場を別にする必要があったのかもしれませんが・・・)。駐車場を無くすことにより各々がギュッとかたまり統一感や連帯感を生み出しているのではと。
せとの森住宅から徒歩数分にあるSetoは、せとの森住宅とは違ったアプローチで社宅を解釈しています。社宅とは文字通り会社が用意した住宅。クライアントは造船業などを営むツネイシホールディングス(株)。主に鉄とコンクリートを使用して施工したこの集合住宅の外観は船をイメージさせます。地域のシンボルとして丘の上に建つ姿はスクッとして潔い印象を受けました。屋上の広場をパブリックスペースとしているので、地域の人達が自由に利用できる点も魅力の一つだと思います。
大三島で感じた「自然の風景と建物及びその周辺との関係をどう表現するのか」という問題は、ここでも強く感じました。リボンチャペルはホテルが経営する婚礼用の教会なので、主張をはっきりさせるべき建築です。せとの森住宅はシルバーのインパクトで主張が強い建築かもしれませんが、外壁を鏡面にした効果で光と影、季節感などの変化を写し取ることができて、風景に馴染んでいくのでは思いました。さらに棟と棟の間の樹木が時間と共に大きく生長することによって、一層深く沈み込んでいくでしょう。Setoはコールテン鋼という素材を採用した点、船をモチーフにした点などから風景やその地域に馴染むことを意識した建築と言えます。リボンチャペル、せとの森住宅は、別の地に建てられても成り立つ建築かもしれませんが、Setoはこの地でなければ成り立たない建築かもしれません。
ほぼ同時期に考えの異なる建築が近い場所で同じクライアントによって依頼されたことは、非常に興味深く貴重なことです。ツネイシホールディングス(株)(及びその関連会社)の力強さ、地域に対する本気さがヒシヒシと伝わる事例です。今後、何度かこの地を訪れて地域がどう変化していくのかを確認していきたいです。
参考資料:「CASA BRUTUS No.176」、「CASA BRUTUS No.179」他
訪問日:2014年9月17日 14:30~
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