第二回の訪問地は、愛媛県今治市大三島町と広島県尾道市、福山市です。大三島は2010年にところミュージアム大三島(設計:山本英明+DEN住宅研究所、2004年)と今治市大三島美術館(1986年)を訪れているので二回目です。このところミュージアム大三島、名前の通り所敦夫氏が自身のコレクションを寄付して出来上がったミュージアムで、その所氏から伊東豊雄氏が依頼を受けて出来上がったのが、今治市伊東豊雄建築ミュージアム(設計:伊東豊雄、2011年)です。ところミュージアム大三島でチケットを購入した時にスタッフの方が、「岩田健母と子のミュージアムも先生の設計ですよ」と教えてくれたので、そこにも行くことに決めました。
もう一か所の訪問予定地、広島県尾道市、福山市には最近面白い現代建築が色々できていると知り、海沿いを訪れてみました。造船業などを営むツネイシホールディングス(株)が尾道市で運営しているリゾートホテル、ベラビスタ境ガ浜の敷地内にあるリボンチャペル(設計:中村拓志、2013年)と福山市にある二つの社宅、せとの森住宅(設計:藤本壮介、2013年)、Seto(設計:マウントフジアーキテクツスタジオ、2013年)が今回の目的地です。大三島と違い公の場ではない場所も含まれているのでどうなるか分かりませんが、邪魔にならないようにと思いながら車を走らせました。
最初の訪問地はところミュージアム大三島です。次に今治市伊東豊雄建築ミュージアムへ。最後に少し車を走らせて今治市岩田健母と子のミュージアムへ向かいました。






















今回の訪問地は、緑豊かな大三島です。そこで三つの美術館を訪問したのですが、「自然の風景と建物及びその周辺との関係をどう表現するのか」という問題を考えさせられました。考え方は大きく分けて二つあると思います。一つは今ある風景と馴染むように新しいモノをつくる。もう一つは今ある風景に対抗した新しいモノをつくる。そして、その度合い(前者寄りになるのか後者寄りになるのか)はその時その時で変化し決定されていきます。風景に馴染むモノは全体の調和がとれているかもしれませんが、インパクトに欠ける場合があります。風景に対抗したモノは主義主張がはっきりしており意図が伝わりやすいのですが全体との調和がとれない場合があります。ただ、この感覚は主観によるところが大きいため、人によっては感じ、人によっては感じないといったあいまいなものも多いです。さらに竣工当初風景と馴染んでいないと感じていたモノもそのモノの経年変化や周辺の変化によって馴染んでいく事もあります。植物の生長は周辺を視覚的に劇的に変化させるアイテムの一つと言えるでしょう。
今回の建物のなかで明らかに異質でインパクトのあるスティールハットが、10年、20年、30年と経過するなかで風景と馴染むようになるのか、インパクトのある状態を保ち続けるのか・・・良い悪いという話ではないので興味深く見守っていきたいです。
最後に訪れた今治市岩田健母と子のミュージアムは、天候と時間と展示されている作品とが相まって暖かく包まれた空間になっていました。ところミュージアム大三島と今治市伊東豊雄建築ミュージアムが大三島の美しい自然と絡めた外に向けた空間づくりであったのに対して、この美術館は外との関係を打ち放しの壁で遮断して中に向けて空間づくりを行っていました。にもかかわらず、三つの中で一番暖かい気持ちになれたのは非常に不思議な感覚でした。
参考資料:「日本の現代住宅 1985-2005」、「CASA BRUTUS No.150」他
訪問日:2014年9月17日 10:00~