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#001-01 再訪、足立美術館

更新日:2022年2月9日

 足立美術館は、島根県安来市出身の実業家、足立全康氏が蒐集した美術品をもとに、1970年11月に開館した私設美術館です。広大な日本庭園と近代日本画コレクションで知られ、なかでも横山大観の作品は質・量ともに最も充実しています。私が最初に訪れた2003年の秋は見学者が多く、ゆっくり周ることができませんでした。2回目の今回は開館直後に到着し、見学者もパラパラでしたのでゆっくり見ることができました。 前回の訪問から約10年、前回と今回ではどのような感じ方の違いがあるのか楽しみです。(今回の研修の最大の目的地は「東光園」でしたが、ルートの関係上「足立美術館」を先に訪問しました。)


枯山水庭を見る。入り口から階段を降りて正面に現れる広大な風景。芝と砂利のエッジが丁寧に処理されている。マツ類、ツツジ類の刈込が印象的。庭と奥の山々(勝山など)が重なり敷地以上に庭を広く見せることに成功している。

苔庭を見る(東~西方向)。スギゴケを中心とした植栽。苔と砂利のエッジの処理が秀逸。

建物から枯山水庭を見る。窓が広いため庭を広角に眺めることができる。

美術館から寿立庵への動線。花崗岩の方形石と自然石を用いた延段。「真・行・草」で考えると「行」と位置づけられる。桂離宮にもこういった延段があるため、桂離宮への尊敬の念が込められているかもしれない。※寿立庵:桂離宮にある「松琴亭」の面影を写して建てられた茶室。

寿立庵への動線。花崗岩の切石を配した延段。「真・行・草」で考えると「真」と位置づけられる。桂離宮にもこういった延段があるため、桂離宮への尊敬の念が込められているかもしれない。

土壁の奥に寿立庵がある。

苔庭を見る(南~北方向)。各所にフィックスの窓がある。窓は額縁の役目を担う。

苔庭を見る(南西~北東方向)。中央に石橋が見える。苔庭は三方向から見えるが、どの場所から眺めても違和感なくおさまっている。

滝組の奥に茶室「環翆庵」が見える。

室内に座ってガラス越しに枯山水庭を見る。ゆっくり眺めるスペースがあるので、時間の許す限り空間を堪能したい。景石は岡山県新見市の小坂部川の川石を用いている。

奥に見える滝は、開館8周年を記念して1978年に開瀑した人工滝「亀鶴の滝」。

フィックス窓から見える枯山水庭。夏の生の額絵。建物の近くに巨石を配したり、高木を植栽したり・・・遠近法、誘導など様々なテクニックを使用している。

池庭。枯山水庭、苔庭と白砂青松庭よりも弱い印象。枯山水庭、苔庭、白砂青松庭と分類しているが、実際は一つながりの庭で、様々な場面、角度から見せることを意識して作庭している。この池庭は一方向からの景色のみが見えるため印象が弱くなってしまったのかもしれない。

夏の生の衝立。他に生の掛け軸、生の額絵などがある。

白砂青松庭。白砂とマツの対比が美しく、点在した樹高の低いマツが愛らしい。ここからの角度でみると、芝と砂利の境目に滑らかさが無い為、おさまりが若干気になる。

名もなき庭。陶芸館の1F河井寛次郎室から2Fの北大路魯山人室へ上る階段の踊り場から見える。ダイナミックな庭を見た後にこの様な慎ましやかな庭を見るとホッとする。

 この美術館を訪れた人々は、庭に落ち葉やゴミが一つも無いことに気づくでしょう。スタッフの皆さんの日頃の維持管理に敬意を表します。落ち葉以外にも整然とした刈込の美しさ、芝と砂利や苔と砂利のエッジの処理の丁寧さに驚かされます。こういった日頃の努力が加味され、米国の日本庭園専門誌で11年連続庭園日本一に選ばれていることはとても素晴らしいことです。どの季節に訪れても素晴らしい景色を見ることができるでしょう。

 自分自身の感覚と照らし合わせた感想は・・・「美術館の特性上室内から窓越しに庭を眺める場面が多かった。暑さ寒さを感じず快適に鑑賞できる点がある反面、外の風を感じたり、温度を感じたりといった、五感をすべて刺激する場面が少なかった。」、「かなり維持管理の精度が高いので、動きが取りにくい庭に映った。これは"庭園もまた一幅の絵画である"という言葉を残した創設者の意向によるものだと思うが、例え季節が移ろおうとも私には固まり続ける庭に映った。」、「地方都市、観光客がメインターゲット、飽きさせてはいけない、サービスを良くしなければならない・・・という観点から新館ができ展示物も増え続けている。見どころたくさん、盛りだくさんは良いがバランスを欠くと大変なことになってしまわないか心配。」・・・

 とはいっても、「庭園日本一」という称号、「来館者の経済波及効果が極めて大きい」という事実がある以上私が感じたことは、ただ単なる少数派の意見です。また、何年か後に再訪してどう感じるか確かめたいです。


参考資料:「足立美術館の庭園 The Gardens of The Adachi Museum of Art」

訪問日:2014年7月16日 9:30~

閲覧数:21回

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