Column(コラム)

#004-01 イサム・ノグチについて

 第四回の訪問地は、香川県高松市です。イサム・ノグチ庭園美術館は高松市牟礼町にあるので、岡山からは車で2時間足らずで到着する場所です。ただこの美術館、ふらっと行っていつでも入ることが出来る美術館ではありません。見学希望日の約10日前までに往復はがきに必要事項を記入して予約申し込みをしなければなりません(開館日時は火・木・土曜日の午前10時、午後1時、午後3時の一日3回)。「事前予約をしてわざわざ見に行く価値があるのか?」と問われたとしても、「是非、行くべき所です。段取りを組みますのでスケジュールを合わせて一緒にいきますか?」と答えたくなる美術館です。2004年に訪れてから今回でまだ2回目ですが、色々な人とまだまだ来てみたい場所の一つです。

 

○イサム・ノグチ庭園美術館

01:美術館内は撮影不可で、この周辺のみ撮影可能。

02:見学開始まで周辺をぶらぶらして待つ。

03:左奥の展示蔵に代表作の「エナジー・ヴォイド」(1971年)がある。

04:美術館周辺にはイサム・ノグチの遊具も。

​05:この建物が美術館の受付兼集合場所兼ミュージアムショップ。

 イサム・ノグチ(1904-1988)は彫刻家として著名な人物ですが、インテリアデザインや造園・作庭の分野などにも多くの影響を与えてきました。氏の作品を見るときに「日本人にはないアメリカ」、「アメリカ人にはない日本」を感じます。そして、それは非常に大きな魅力であるとともに、氏にとって大きな葛藤になったのではないかと想像します。例えば照明器具の「AKARI」シリーズは、使用している材料(竹ヒゴ、和紙など)や作品全体に和の雰囲気が感じられます。しかし、純粋に和とは言い切れない不思議な感覚が沸いてくるのは、フォルムの美しさとは別に、日本人でありアメリカ人でもあることの何かが感じ取れるからではないか・・・。「AKARI」シリーズが和室だけではなく色々なシーンにマッチするのは、和の中にほのかに洋を纏っているか、恒久的なものを纏っているからではないかと・・・。
 また、石を用いた彫刻作品のほとんどの材質は花崗岩か玄武岩です。氏がアトリエとして居を構えた牟礼町は庵治石(花崗岩)の産地。イサム・ノグチ庭園美術館内にある「イサム・ノグチの墓石」やパリ、ユネスコ本部にある「ユネスコのための庭園」に用いられている石は岡山県産の万成石(花崗岩)です。「土門拳記念館の庭」や「広島の原爆慰霊碑(実現せず)の模型」では玄武岩が用いられています。日本人にもっともなじみの深い花崗岩(御影石も花崗岩、墓石は花崗岩が多い)や玄武岩(六方石も玄武岩、城崎温泉近くにある玄武洞から玄武岩が命名されたらしい)を地球上の様々な場所で好んで用いたことは、良質であったことは勿論ですが、日本を意識し続けた結果ではないかと・・・。
 このイサム・ノグチ庭園美術館で作品を鑑賞していると色々な思いが駆け巡ります。鑑賞時間は約1時間ですが、あっという間に過ぎてしまった印象です。季節をかえて訪れてみても楽しいでしょう。館内の作品とは直接関係ないのですが、牟礼のアトリエを整備するにあたりユーカリの木が植樹されたそうです。その木が現在30mを超える巨木に生長していました。この話を聞いたとき、広島城にあるユーカリの木が原爆の熱線に耐え、生き続けている事を思い出しました(当時ユーカリが輸入されていた事、お城にオーストラリア原産の樹種を植えた事、70年耐え続けた事が衝撃でした)。その場にそぐわないかもしれないモノが年月を経て、全く違和感なくおさまっている情景は広島城と同じでした。
 イサム・ノグチ庭園美術館は撮影できる箇所が限定されいます。良い意味で解釈すると、記録より記憶に残せということでしょうか?画像3枚ですと少し寂しいので、今までに訪問し撮影したイサム・ノグチ関連の画像を以下に掲載いたします。

​06:高松空港の入り口にある「time and space」(1989年、香川県)。想像以上に大きい作品。氏が亡くなられたのが1988年なので、完成を見ること無くこの世を去ったことになる。

07:「time and space」から北へ約500mにある壁面石組。「time and space」と同時期に制作された作品。

08:「アーケイック」(1981年、香川県)。撮影当時(2006年)は香川県庁舎本館2Fにあったが、現在は香川県立ミュージアム1Fへ移設されている。

09:平和大橋の欄干デザイン。「Tsukuru つくる」(1951-52年、広島県)。

​10:西平和大橋の欄干デザイン。「Yuku ゆく」(1951-52年、広島県)。

11:「山つくり」(1982年、岡山県)。大原美術館・分館前の庭にオーギュスト・ロダン、ヘンリー・ムーア作品などと共に展示されている。美術館に入館しなくても気軽に見ることが出来る。

12:東京国立近代美術館にある「門」(1962年、東京都)。撮影当時(2013年)は朱色と黒色の二色だが、不定期で塗り替えられる(朱/黒 or 青 or 黄/黒の3パターン)。

13:「こけし」(1951年、神奈川県)。神奈川県立近代美術館 鎌倉の中庭中央に展示されている。

​14:「ブラック・スライド・マントラ」(1992年、北海道)。大人も子供も滑って遊べて楽しめる作品。

 イサム・ノグチの最大の作品であるモエレ沼公園(2005年、北海道)。マスタープランを完成させてノグチは世を去ります。意志を引き継いだ人々の17年にも及ぶ協同作業によって、2005年7月、グランドオープン。2013年に念願かなって、やっと訪れることが出来ました。

○モエレ沼公園

15:モエレ沼公園の全体map。広さ189haなので、一日で全てをじっくりみることは不可能に近い。

16:「ガラスのピラミッド HIDAMARI」。夏はやはり暑い。

17:「モエレ山(標高62.4m)」を登り「プレイマウンテン」と「アクアプラザ」を見る。

18:「モエレ山」の頂上から「海の噴水」を見る。その奥に「モエレビーチ」が見える。

○モエレ沼公園

19:「アクアプラザ」。奥に「プレイマウンテン」が見える。

20:「プレイマウンテン」の麓に「ミュージックシェル」が。

21:「テトラマウンド」。円いマウンドに寝転がれば自然と彫刻を体感できる。

22:「テトラマウンド」。ステンレス柱の大迫力。

○モエレ沼公園

23:「プレイマウンテン」。天気も良く本当に素晴らしい光景。

24:「プレイマウンテン」の西斜面。99段の石段(花崗岩)と芝が頂上まで。

25:「プレイマウンテン」の東斜面はカーブした緩やかなスロープ。

26:「サクラの森」。個性的な遊具があり誰もが楽しめる魅力的なスペース。

27:「サクラの森」。少々老朽化が進んでいる。使用禁止の遊具もあった。

 今まで訪問した場所でお薦めするとしたら、イサム・ノグチ庭園美術館とモエレ沼公園を挙げます。モエレ沼公園は子供たちが縦横無尽に駆け巡り、自由に遊びまわっている印象で、大きくて広くて斬新で感激するのですが、使う人たちが主役。そこに素晴らしさを感じました。良いものは良いという単純でありながら、難しい問題を力強く乗り越えている感じがしました。”雪のモエレ沼でスキーかソリかスノボ”、なかなか魅力的な響きですが、実現は難しそうです。

 

参考資料:「イサム・ノグチ庭園美術館」、「イサム・ノグチの世界」、「モエレ ACCESS MOERENUMA PARK」、「イサム・ノグチ生誕100年」、「イサム・ノグチ 世界とつながる彫刻展」、「CASA BRUTUS No.47」、「CASA BRUTUS EXTRA ISSUE A CENTURY OF ISAMU NOGUCHI」他

イサム・ノグチ庭園美術館の訪問日:2015年01月13日 10:00~