Column(コラム)

#002-03 地域を元気にする力(その2)

 近くにあるのになかなか行くことができなかった場所は結構ありますが、今回の神勝寺(臨済宗建仁寺派 天心山 神勝禅寺)もその一つです。近県で藤森照信氏の作品は、今の所ここでしか見ることができません。名和晃平氏の作品も犬島のF邸で見ましたが、恒久展示かどうかわからないので、恒久的に見ることができるのはおそらくここだけ。色々とおもしろいことをされている二人の作品を同じ敷地内で見学することができるなんて・・・。神勝寺の力、恐るべし!

 

○神勝寺

01:総門。1967年に移築。

○神勝寺内 洸庭

02:総門を振り返ると洸庭(設計:名和晃平|SANDWICH、2016年)が見える。

○神勝寺内 松堂

03:総門をくぐって、西へ。寺務所としての機能を有している松堂が見えてくる(設計:藤森照信、2014年)。

04:松堂全景。手曲げ銅板で葺いた屋根が良い感じ。

05:賞心庭から松堂を見る。奥に洸庭が見える。

06、07:屋根の頂部にはマツが植栽されている。訪問時は冬期であったため、植物が少々寒々しい。

08、09:表面を削った松丸太の柱が並ぶ。壁も荒目で、手仕事の風合いが出ている。

​10:屋根の突端にもマツが。

11:正面からは見えないが裏に回ると管理用の梯子がある。

○神勝寺内 多宝塔

12:松堂から洸庭へ行く道中に見えてくる。

○神勝寺内 洸庭

13:正面に洸庭が見える。両サイドのサクラは、年に二度開花するシキザクラ。

14:橋を渡った先に洸庭が。

15:建仁寺の屋根などに使用されている杮(こけら)葺きを外装に使用。流線型が美しい。

16:コーナー部分のおさまり。今回の杮葺きにはサワラ材を使用している。

17:床に敷かれている砕石は、近くの採石場の崖をダイナマイトで破壊し運び込んだ。

18:洸庭は小高い丘の上に建ったいるので、この位置から総門、松堂が見える。

19:ダイナミックな「石の海」。

20:上部が黒く見えているが、全体を同じサワラ材で施工している。

21:右側にソテツワラビが見える。残念ながらこの部分だけ唯一周囲と調和していない。

22:「舟」をモチーフにした洸庭全景。浮遊感も感じられる。

23:ベンチがあるので、座ってゆっくり庭を眺める事もできる。

24:近くで見上げると迫力を感じる。

25:宇宙船のハッチのような入口。高さも幅も無いので、屈みながら入場する。中は・・・。体感したものにしかわからない空間が広がっている

○神勝寺内 無明院

26:洸庭からそこそこ歩いて無明院へ。中根金作氏の作庭による枯山水庭園が眼前に広がる。

27:無明院から庭に向かって。右側より、「無明の庭」「阿弥陀三尊の庭」「羅漢の庭」と呼ばれている。

 神勝寺の創建は1965年12月となっており、寺院としては新しい部類に入ります。開基は常石造船(株)二代目社長の神原秀夫氏、臨済宗建仁寺派の特例地寺院です。点在する建立物は移築、再現、復元したものが多く、三溪園(横浜市)、四国村(高松市)、江戸東京たてもの園(小金井市)のような印象を受けました(あくまでも私見ですが)。ここに寺務所として松堂(設計:藤森照信)が竣工したのが2014年。アートパビリオン洸庭が竣工し、「神勝寺 禅と庭のミュージアム」としてリニューアルオープンしたのが2016年9月です。#002-02 地域を元気にする力(その1)で掲載した三つの建築物(リボンチャペル、せとの森住宅、Seto)の竣工年が2013年。まだ見学できていませんがONOMICHI U2(設計:谷尻誠)が2014年。短期間で多くの建築作品が、様々な考え方や手法で完成しています。これら全てのクライアントがツネイシホールディングス(株)(及びその関連会社)という事実。恐るべし!

 松堂は、銅板や松丸太の柱が経年変化で良い感じになっており、周囲と調和しているように感じました。各所で工業製品を使用しているのですが、表面の仕上げが手作業に近い為暖かみのある作品に仕上がっています。屋根の頂部にアカマツが植栽されいる様子は、「藤森照信展 自然を生かした建築と路上観察」を見学した後だったこともあり、違和感を受けませんでした。ただ、#011 藤森照信展 自然を生かした建築と路上観察で述べたように今後のマツの生長によって、屋根周辺がどういった変化を見せるのかが非常に気になります。漏水やマツが枯れないことを祈ります。

 洸庭は、禅を意識したつくりで、「素材のもつポテンシャルを引き出すため、内外に使用する材の種類や建築的な機能は減らすように努めた。例えば彫刻の場合、ワンマテリアル・ワンテクスチャーの造形は空間に凛とした響きを与える。《洸庭》の杮葺きにも同じような効果を期待した」という名和氏の言葉が印象的でした(KOHTEI KOHEI NAWA | SANDWICHより)。

 面白いと感じたことの一つとして、室外では本物の水を用いず、室内では本物の水を用いたことです。外から洸庭を見てみると、砕石の荒々しい海に浮かぶ舟、もしくは浮いている飛行体の様に見えます。海の広さは砕石が敷き詰められた範囲で区切られ、視覚的には有限となります。一方、室内の洸庭は、暗闇とわずかな光、水の揺らぎを感じる空間で、水が存在していることは理解できますが、暗闇である為境界が判然とせず、広さや大きさは個人の想像で決定することになります。開かれた空間が有限で、閉じられた空間が無限。自然を感じる空間に想像の水、人為的に作られた空間に本物の水・・・といった反転した感覚が生じ、とても興味深い体験となりました。いずれにしても言葉よりも感じることが重要です。一度体感しに訪れてみてはいかがでしょうか?

 

参考資料:「神勝寺 禅と庭のミュージアム」、「KOHTEI KOHEI NAWA | SANDWICH」、「CASA BRUTUS No.176」、「CASA BRUTUS No.200」他
訪問日:2017年12月10日 13:00~

 

Green Scape Lab

Green Scape Lab(GSL)

グリーンスケープラボはガーデン(造園)&エクステリア(外構)工事の設計、施工を通じて皆様に上質な空間を提供し続けます